自己変革の裏技

■ その二十一　「人前であがらない術」

ボランティアらしきものを初めて体験した時のこと。
あるイベントで会場前整理という係を担当した。
ホールの入口に立ち、来場者を迎え、案内する役目。

「笑顔で接すること」を心がけてがんばろうと思った。
しかし、本番になるとその笑顔がなかなかできない。
人前に出る経験が少なかったので、大きな声も出せない。

恥ずかしいという思いがいっぱいで、
ぎこちない自分を過度に意識してしまう。
緊張して立ちつくしているだけだった。

「トイレはどこですか？」などと尋ねられる。
そんな簡単な質問にも赤面しながら答えるありさま。
情けない自分がいたたまれなかった。

他の人達はどうやっているのだろう？
そう思い、まわりのボランティアを見わたしてみた。
みんなそれぞれの場所で忙しく働いていた。

その一人ひとりの姿には、
自分というものがまったくなかった。
私は、それまでの自分が恥ずかしくなってきた。

すると、不思議なほど落ち着いて
ためらいなく笑顔を出せるようになった。
気がつくと、夢中で大声を張り上げていた。

　　　◇　　　　　　　◇

世のため人のために生きることは、快感である。

1999-03-25