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自己変革の裏技
■ その十九 「鬼を仏に変える術」
友人数人と喫茶店に寄った。
席に着くと、しばらくして中年のウェイトレスが来た｡
しかし、そのウェイトレス。
水を入れたコップを、まるでテーブルに叩き付けるように乱暴に置く。
私たちがびっくりして、顔を見上げると、
「何にしますか！」
にらみつけるように、恐ろしい顔で注文を聞く。
（なんだコイツ？ 私たちは客だぞ！ なんて失礼な女だ・・・）
ウェイトレスが去ってから、
私たちは、ひどい店に入ってしまったことを
後悔しながら、ささやきあっていた。
それにしても普通じゃない。
私は、不思議に思い、店内をぐるりとながめてみた。
すると、さっきのウェイトレスが一人で走りまわっている。
他のウェイトレスが無断欠勤したのか、
途中でエスケープしたのか、事情は分からないが、
かなり広い店内で動いているのは、彼女一人だけだった。
なにかアクシデントがあったのだろう。
彼女は自分一人できりもりさせられている今の状況に
大きな不満があるのだ。だから、
その怒りを、見境なしに、私たちにぶつけていたのだ。
そう思うと、彼女が少しかわいそうになってきた。
鬼のような顔で接してはいるが、
たった一人で本当によく動いている。
おしぼりを出して、オーダーを聞いて、メニューを運び、
レジまで一人でこなしている・・・。
で、店を出る時のこと。
レジで彼女にレシートを渡しながら、
「ひとりで大変ですねぇ」と、思わず言葉が出た。
すると、あんなに恐い顔をしていた彼女が、
今にも泣きそうなクシャクシャの顔になり、
「そうなんでよ〜〜、ほんとう大変なんです」
と言って、今度は、はにかみながら笑い返してきた。
私は、予想外の素敵な笑顔を見せられ、
少しドキドキしてしまった。
◇ ◇
教訓。
どこまで相手に関心を抱くことができるか。
それが、勝負の分かれ目だ。
1999-03-07
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