自己変革の裏技

■ その四　性欲に負けない術


　なぜ性欲に負けてはいけないのか。そのことで突っ込んだ議論はしたくない。反論にも応えない。異性とのトラブル、家庭不和といった問題を招くことにならないよう、常識的な社会通念から、度を超した性の欲に惑わされないための方法を紹介したいだけだ。


　|||||　いかに付き合っていくか。

　英雄、色を好む。という言葉がある。今でもまれに聞くことわざだ。しかしこれは、強靱な精神力を持つ英雄にかこつけて、己の情欲を正当化しようとする戯れ言に過ぎない。こんなことわざは、安易に披露しない方が良い。（と言いつつ使っているが）

　さて、性欲は、生き物としての本能的な欲望である。だから、これを無くすなんてことは到底できない。これは、うまくコントロールしながら、一生お付き合いしていく以外に、有効な方法はないだろう。
　では、どうやって自分の性欲をコントロールすればよいか？　それには、昔からいくつかの方法があったようである。


　|||||　精力を持て余さない。

　一般的にアドバイスされるのは、スポーツなどを行い、精力を発散し、気分転換を図りながら、性欲をコントロールしなさい、ということ。しかし、仕事がある、家庭がある、通信がある(^^;、という忙しい現代人やビジネスマンにとって、なかなか爽やかな汗をかくということは難しい。

　それに、スポーツを行うとなると薄着のスタイルになるものが多く、逆に性欲を誘発してしまうこともあるのではないだろうか？　また、運動し体を鍛えることによって、ますます健康となり、精力絶倫で性欲も絶好調ということもありはしないか？　これはたぶん私だけの老婆心だろう。

（昔、毎日ジョギングをして名古屋シティマラソンにも出たことがある。しかしどうもスポーツは苦手なのだ。ゴルフも誘われて始めたが、初めてコースに出た日が大雨で最悪のコンディション。以来、嫌いになったままである。）


　|||||　虚しさをイメージせよ。

　その昔、仏陀は、性欲に悩む弟子を墓場に連れて行き、腐乱していく女体を眺めさせたという。いくら性欲に身を焦がしている人間でも、さすがにウジ虫がうようよとうごめく裸体を見せられては、いっぺんに目が醒めたことだろう。

　現代の日本では、古代のインドと違って、そんな体験をする場所もないが、そのシーンをイメージするだけでも、性欲に悩む人にとっては、大きな効果があるはずだ。ムラッときたら、ウジ虫の女体。これを連想づけておくと、けっこう効き目がある。

　どんなに魅惑的で美しい女性であっても、いつかは年老い、やがて醜く腐り果て、この世から消滅してゆく（さすがにすごい表現になるなぁ）。いわゆる諸行無常のイメージトレーニングとして、男なら一度は試してみて欲しい技である。


　|||||　より大きな欲を出せ。

　毒には毒、ではないが、同じ悩むなら、もっと大きな欲を出して悩みなさい。もっと次元の高いことで悩め、というコントロール法である。「いい女が欲しい」などという小っぽけな願望に夢中になるのではなく、でっかい夢を持て、地球的なレベル（？）での欲を出せということ。

　人間は、一度に複数のことを処理することができない。そして、いつも楽しいことから優先して手をつける習性がある。だから、性欲に駆られることよりも、より喜びの大きな夢、楽しい目標を抱くことができれば、過度な性癖に溺れることなく、性生活も自然に矯正されてゆくという仕組みだ。

　しかし、これも実践しなければ意味がない。ところが、いざ実践しようとすると、夢を抱ける人と、そうでない人がいる。夢を持つということができずに苦悩する若者は多い。自分のやりたいことが分からない。自分の夢を見つけることができない、という人は意外に多いものだ。


　|||||　堕落の美学なんて、大ウソである。

　夢については、別の機会に書きたいので、一つだけ。
　自分の夢を探す旅は、一生続くかも知れない。しかし、自分にしかできない事は必ずある。世界中でたった一人、自分にふさわしい仕事、自分だけが描ける夢はあるのだ、と信じることが一番。本当にあるかどうかは分からない。が、信じることの効果が絶大であるから、そう確信するのだ。

　色事だけに染まった人生は、何ら動物の一生と変わらない。人間なら、やはり「人間らしく生きたい」と思うのが、ごく自然な人間の思考というものだ。自分は動物だという勘違い、開き直りは、どう考えても不自然。間違っている。

　ミミズになりたいか、それとも神様になりたいか。堕落なんて全然美しくない。私たちは、より高次なものへ成り上がるために生きているのだ。動物へ成り下がるために生きている人間は、この地球上に一人もいない。もし、そんな人がいたとしたら、その人はもはや人間ではないものへなりつつあるのだから。


　|||||　偽物と訣別し、本来の自分を取り戻せ。

　しかし、情欲の泥沼の中にいたって構わない。ただれきった日々に漂っている生活であっても良いのだ。問題にしたいのは、今からの自分、これからの自分自身。どんなに失敗した過去を持っていようと、今日から変わっていけば良いのだ。反省が不要とまでは言わないが、まずは今からの自分づくりを優先すべきである。

　汚れた自分とはグッド・バイ。過去の自分は、とりあえず横において、ただ今、この瞬間から、新しい自分を作っていこう。自分とは何者か。人間とは何か。愛とは。地球とは。夢とは。そうした、「人生の宿題」や「自分の使命」「人間の課題」について、これからじっくり腰をすえて考えていこう。

　すると、ほら、いつの間にか性欲に打ち勝っている自分を発見することができる。こんな風に、努力していく限り、必ず新しい自分との出会いがやって来る。どこかに待望の出口が見えてくる。がんばろう。がんばろう。がんばろう。私も未熟者、一緒に出口を探そうじゃないか。

1996-10-03