超便利フォーム

■第１弾「脱どん底プログラム」

　１年に何度か悲惨な状況下に置かれることがある。

　例えば、納品した原稿にクレームがついてやり直しとなり、締切りが重なってしま ったとか。思わぬトラブルが発生して予定が大幅に狂ってしまった、という時だ。や らなければならないことが山のように出てくる。しかし、時間はまったくないという ことがある。

　そうした日は、当然のように徹夜体制となる。しかし、徹夜をしても次の日の予定 がぎっしりで、うまくスケジュールがこなせるか分からない。いや、分からないとい うより、不可能としか思えない。下手をすると２〜３日ぶっ続けで作業をしなければ いけないかも・・というようなことがある。

　しかし、そんな“どん底”状態に陥った時は、いつも使っている手帳やスケジュー ル表はまったく役に立たなくなってしまう。

　本来、手帳やスケジール表は、そうした忙しい時にこそ活用して、自分の予定を組 み立て、コントロールするものなのだろうけど、ムチャクチャ忙しい時というのは、 手帳を出して開くというわずかな手間さえ惜しくなる。いつも使っている予定表に書 き込んだりすることさえもどかしく、苦になってくる。

　では、そんな時、どうするかというと、結局次のようにしている。

　まず、１枚のメモ用紙を取り出し、一番上に期限や締切りの日時を「05/17 08:00」 などと書き、一番下に現在の日時を書き、その間に１時間単位の目盛り、あるいは30 分単位の目盛りを打つ。

05/17　 08:00 07:00 06:00 05:00 04:00 03:00 02:00 01:00 24:00 23:00 05/16　 22:00

　次に、このタイムテーブルの中に、やらなければいけないことを、所要時間を考え て真剣に並べていく。余裕がないので、大抵の場合、なぐり書きだ。

　で、あとは、時計とこのメモ用紙をにらみながら、必死に仕事に励むのである。 　このやり方のポイントは、目的を達成するために必要な最低限のことだけを記入す るようにすることだろう。私の場合、食事の時間さえ記入できないことがある。

　一見、手帳や予定表など、普段使っている物でやっても良さそうに思えるが、それ では微妙に効果が違う。

　白紙をわざわざ取り出して、その上で改めて予定を立てるという行為をすることに よって、他の事柄に目を奪われることなく、集中することができる。あれもやらなけ ればいけない、これも・・・といったパニック状態に陥っている自分の頭の中を、一 度リセットして考ようという意識が働いているのかも知れない。

　また、通常のスケジュール表では１日24時間の目盛りがないのも、メモ用紙を使う 理由のひとつだろう。さらに、普通の手帳では、いま現在から締切り時までの「連続 した時間」だけを眺めることができないということもある。

　普通の予定表や計画表も、現在から達成のときまでの予定を立てる。しかし、その ほとんどは、日単位で作るものが多い。１時間や30分単位で１日〜３日程度の連続し た時間単位の予定を立てられるようにしたものはまずない。

　そこで、「あぁ、どん底だぁ」という日に使う１時間単位のフォームとして、私は これを「脱どん底プログラム」と呼んで愛用している。

　白紙に「自分の手持ちの時間」を書き出すことで、「紙に書いたこれ以外に自分の 時間はない」と自覚することもできる。この、いわば「絶対時間」ともいうべきもの を明確にして、必死で予定をやり繰りし、ガムシャラに突進していかなければ、私の 場合、どん底状態からはなかなか脱出することができない。

　こんなやり方をしているので、私のスケジュール表は、忙しい日ほど肝心の記録が なく白紙のままになっている。何だかなぁ・・・。

1997-05-07